私、だてに泣いてた訳では

ありません。

 

 3才児のAちゃんがママに会いたいと泣いていた。3才児がママに会いたいと泣くのは別に珍しい事ではないが、勝ち気なAちゃんにしては、意外な事であった。どうにかなだめようと試みたがなかなか泣き止んでくれない。ちょうどそこに、1才年上の従姉妹のB子が通りかかったので、「めんどう見てくれない?」と頼むと快く引き受けてくれた。B子は、「Aちやんね、ママは家で待っているの。どこかに行ってしまったり、いなくなってしまわないの。いーい、もう少しで家に帰れるから頑張るの」そう諭すと不思議にAちゃんは泣き止んでうなずいていた。園長の私は脱帽である。長年幼稚園に勤め、このようなケースは数限りなく接してきた。しかし、この私より、B子のほうがよほどなだめるのが上手だったのである。

 そういえば、B子は一年前、長い間ママと別れるのを泣いていやがっていたものである。担任はそんなB子を母親から何度となく引き剥がしていた。そんな時、B子は幾度となく、ママから同じような言葉を聞いていたのかもしれない。B子にしてみれば、自分が一番納得できた言葉が「ママは、家で待っている」ということだったのかもしれない。

 B子ちゃんのママ、B子ちゃんは立派に成長していますよ。一年前、B子ちゃんを残して帰るママの後ろ姿を、どんなにかつらいだろうなと思って見ていました。今日はそんなママの後ろ姿に、「やったね!」と心の中でつぶやきました。そして、B子ちゃん、あなたは、だてに泣いていたのではなかったのですね。