私たちが誇れるもの

  ある日のこと、かたつむりは家を持っていて、なめくじは家を持ってないということになり、それはどうしてかということになりました。こどもたち曰く、「かたつむりは巣を作ることが出来ないので家を持っているが、なめくじは巣を作ることが出来るので家を持っていない」。科学的な根拠はともかくこどもたちの結論である。

 又、カラスがやって来ては手洗い用の石けんを持っていってしまう。どうしてなんだろうということになった。こどもたち曰く、「カラスはきれい好きなのでお風呂で使っている」。先生がいじわるに「カラスの巣に水を入れたら漏ってしまわないかな?」。こどもたち「……」。さらに先生が「カラスが白くなっちゃったらどうするの?」こどもたちの困りきった顔、顔、顔。

 こんな話もありました。アオムシという言葉はよく知っているこどもたちの会話。「この虫はあおいから(緑)アオムシだ」「じゃー、この茶色の虫は茶色虫かな?」「うん!そうだよ」と、自信満々。

 おたまじゃくしにしっぽがあって、かえるにしっぽのない訳。この話は物語となりました。

 このように自由な発想をさせる自然、やさしく受け止める先生、そして、こどもたちが根岸幼稚園の宝です。

 

 

 

伝えたい「ありがとう」

  「園長先生!どうしましょう」と、新任の先生が飛び込んできた。「どうしたの?」「ちょっとお願いします」 ついてゆくと、トイレで「先生出ちゃうよー。早くちんちんだしてー」と、男の子が腰を降りながら先生を呼んでいました。合点。「先生頑張って!」と励まして帰って来てしまった。

 「園長先生、できました。おわってから子供がありがとうって言ってくれました。とても嬉しかったです」「よかったね。うん、うん」

 「この幼稚園の教育目標は?」と、質問されて、「ありがとう」「ごめんなさい」が言えるこどもたちに育って欲しいと願っています。と、答えます。この二言が心から言えるようになれば他になにも望みません。とても大切なことで、なかなか勇気のいるものです。

 

ある日ある時

 下の園庭に立っていると太陽がケヤキの梢をつたつて沈もうとしていた。梢の先からさすやさしくも暖かい光は今日一日の安息を満足気に感じられる。このケヤキ、春の新緑、真夏の木陰、秋の落ち葉拾いと、何も語りはしないがいつもこどもたちと一緒である。そして真冬の、春を待つ梢のなんと自信に満ちたことか。 語りはしないものの、いついかなる時にもそこに居るこのケヤキの存在間の偉大さ、あらゆる悲しさも、あらゆる喜びもすべてをしっていながらひたすら空に向かって両手を広げ、こどもたちに心路を広げるこのケヤキが私たちの心のよりどころである。

 

こだわる保育

 幼稚園見学者が、保育中にもかかわらず園長室にエスケープしてきた3才児を見て、「園長先生、いつもこうなのですか?」と、言われた。私は「いつもこうではありませんが、担任の先生はこの子がどこにいっているのか知っています。そして、保育に区切りのついた頃迎えにやって来ます」と答えました。見学者の方は驚かれた様子でしたが、幼稚園は担任の先生だけが保育する場所ではないと私は思っています。すべての教職員が、それぞれの立場でこどもたちに接することが大切です。何よりも一人の教職員がすべての園児の名前と顔とをしっていることが理想です。その範囲内の園児数が幼稚園における理想の定員です。教職員のチームワーク、そして信頼感こそ幼稚園における人的環境です。そうしたものが確立されているからこそ、この子の担任は安心して保育に臨めるのです。 しばらく遊んでいた3才児、「園長先生、帰る」といって自分の保育室に帰っていった。

 

保育日誌より

 昨日、飼っていたザリガニが死んだのでA君とお墓を作りました。ところが今日、A君がザリガニのお墓に水をあげていました。「どうしたの?」と聞くと、「だって水をあげないとザリガニが大きくならないもん」と話してくれました。いつもは乱暴な子というレッテルを貼って見ていた私はA君に心の中で謝りました。

 

職員会議より

 「洋式の便所を幾つか作って欲しいと思います」 「生活様式の変化で、これからは配慮してゆかなくてはなりませんね」 「現在タイルの便器周辺ですと、足が滑って広がり、便器に直接座りこんでしまうのです」

 それはそれとして、しゃがめない子、お尻を紙で拭くものだと思っていない子、生活様式の変化をまざまざと感じさせられます。

   

「機械仕掛のかぶとむし」

 私のおべんとうを覗き込んでいる3才児。「おいしそう。食べてみたいな」「これはイカ」「うん、うん」「これは豚」「違う。先生それはお肉だよ」「とうもろこしおいしいよ」「先生ウソばっかりいつてる。それ、コーンだよ」………

 年長児は、担任の先生が釣って来たザリガニを一匹づつ飼います。毎朝水を換えるよう約束したところ、A君石けんで洗いだした。「きれいに洗ってあげているの」「キャー やめて!」と、先生。

 最近のこどもたちがよく使う言葉に「クリアー」「リセット」「全クリ」などがあります。

本来の姿をしらず、かぶとむしが機械で動いていると思い込んでいるこどもたち。倒れたはずの登場人物がリセットすることですぐに画面に登場する今日、「機械仕掛のかぶとむし」なる言葉の出現もうなづけます。それにつけてもなんと寒々とした時勢でしょうか。もっと自然のぬくもりをこどもたちに味わって欲しいものです。